2012年4月12日木曜日

ヘルパーT細胞


 ・MHCクラスII分子:α鎖(α1、α2)と、β鎖(β1、β2)で構成される。ヒトでは、HLA-D、DR、DP、DQ抗原が存在する。クラスII抗原分子は、限られた細胞表面に発現する:樹状細胞(皮膚ランゲルハンス細胞など)、単球・マクロファージ、B細胞、活性化T細胞(静止期のT細胞は、発現していない)、胸腺上皮細胞、精子など。クラスII抗原の先端部分には、抗原ペプチドと結合するための、溝(antigen binding groove:抗原結合窩、binding cleft)が存在する。 細菌は、エンドサイトーシスで細胞内に取り込まれて、リソソームで抗原ペプチドに分解され、MHCクラスII分子の溝に結合して、細胞表面に発現される。このようにして、MHCクラスII分子は、外来性蛋白の抗原ペプチド(精製ツベルクリンなど)を、polyproline type IIという引き延ばされた形で、MHCクラスII分子の溝に結合させ、CD4陽性ヘルパーT細胞に提示する。MHCクラスII分子を構成するアミノ酸残基が、MHC(HLA)の型によって、遺伝的に異なるため、MHC(HLA)の型によって、MHCクラスII分子の溝は、異なる。そのため、同じ抗原ペプチドであっても、MHCクラスII分子の溝への結合し易さは、MHC(HLA)の型によって、異なる。そのため、MHC(HLA)の型によって、抗原ペプチドに対する免疫応答の強度が、異なる。

 注2:CDとは、cluster of differentiationの略。T細胞などの免疫機構を形成する細胞の表面に存在する、機能的に重要な分子を分類するのに用いられる。CD抗原分子は、モノクローナル抗体で検査される。


フクロウは、歯を持っています

 注3:TCRとは、T cell receptorの略で、T細胞受容体(T細胞抗原受容体、T細胞抗原レセプター)のこと。大多数のT細胞(αβT細胞)のTCRは、α鎖(Vα、Jα)とβ鎖(Jβ、Dβ、Vβ)で構成される(TCR2)。
 α鎖もβ鎖も、抗原と結合する免疫グロブリンと同様に、可変領域(V領域)とコンスタント領域(C領域)から構成されている。TCRをコードする遺伝子は、免疫グロブリンの遺伝子と同様に、再構成(gene rearrangement)され、多様な抗原に特異的に反応する。 
 胸腺では、自己反応性T細胞を、除去する:胸腺にやって来た、未分化なT細胞は、選択を受け、胸腺の抗原提示細胞(HLA+自己抗原)と、適切な親和性を有する細胞(クローン)は、分化・成熟する。胸腺の抗原提示細胞(HLA+自己抗原)と強く反応する細胞(親和性が高いクローン:自己反応性が強いクローン)や、反応が弱い細胞(親和性が低いクローン)は、死滅させられる。未分化なT細胞の内、未分化なT細胞の98%以上は、死滅(アポトーシス)させられる。
 胸腺で、α鎖とβ鎖を構成したT細胞は、末梢血、リンパ節、脾臓などに分布する。
 γ鎖とδ鎖で構成されるTCR(TCR1)を有するT細胞も、存在する。このTγδ細胞(γδT細胞)は、末梢血やリンパ節では、 リンパ球の1〜5%しか存在しないが、皮膚や小腸の上皮や粘膜では、T細胞の50%以上を占める。Tγδ細胞もCD16を発現するものも多く、MHC拘束性も見られず、NK細胞様、ADCC様の細胞機能を持ち得る。Tγδ細胞は、Th1細胞への分化を抑制すると考えられている。γδT細胞(Tγδ細胞)は、主に、肝類洞内で分化する。
 胸腺外分化T細胞(Tγδ細胞)は、NK細胞と同様に、Cd56、CD57が陽性。

 胸腺は、えら呼吸上皮下にあるリンパ球集合が発達した。

 そもそも、リンパ球は、マクロファージ(単球)から進化して来たと考えられている。
 1.マクロファージ(単球)→
 2.NK細胞(CD2+CD3-TCR-、CD161+、IL-2Rβ+LFA-1+のLGL)→
 3.NKT細胞(CD3+、TCRは一種類+、 CD161+)→
 4.γδT細胞(Tγδ細胞:胸腺外分化T細胞:CD2+CD3+TCR+でIL-2Rβ+LFA-1+のLGL)→
 5.αβT細胞(胸腺由来T細胞:CD2+CD3+TCR+でIL-2Rβ-LFA-1-:IL-2RβやLFA-1は、必要時にのみ発現する)
 と分化したと考えられる。


内向的には感じるものの反対ません

 注4:表面にIgM、IgD、CD40陽性のB細胞は、CD4、CD154陽性のTh1細胞と反応する(抗原を、B細胞から、ヘルパーT細胞のTCR・CD3複合体に、提示される)。
 ヘルパーT細胞から、IL-4が産生されると、B細胞は、IgG1やIgEを産生するようになる。ヘルパーT細胞から、IFN-γが産生されると、IgG2aやIgG3が産生されるようになる。ヘルパーT細胞から、TGF-βが産生されると、IgG2aやIgAが産生されるようになる。

 注5:リンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞など)、単球は、末梢血の塗沫標本では、丸い形をしているが、実際には、リンパ球や単球には、頭部と下部(尾部)が存在し、プレート内で培養すると、図のように、突起を出したりして、極在し た姿を示す。

 注6:炎症性サイトカインとしては、TNF-α、IL-1β、IL-6、IFNγ、IL-8が存在する。炎症性サイトカインは、活性化マクロファージや活性化血管内皮細胞から、産生される。
 抗炎症性サイトカイン(抑制性サイトカイン)としては、IL-4、IL-10、TGF-βが存在し、活性化マクロファージなどから、産生される。なお、活性化マクロファージは、抗炎症作用のあるプロスタグランジンのPGE2をも、産生する。
 T細胞サイトカインとしては、Th1細胞(TH1)から、感染症の際に、IL-2、IFNγが、産生され、Th2細胞(TH2)から、アレルギーの際に、IL-4、IL-5が、産生される。  

 注7:Toll-like receptor (TLRs)は、マクロファージ(Mφ)や樹状細胞に存在し、病原体(細菌やウイルスなど)に特異的な蛋白、DNA、RNAを認識する。その結果、細胞内シグナル伝達経路が活性化され、炎症性サイトカインや、インターフェロンが、産生される。Tollは、ハエ(蝿)の遺伝子で、真菌の侵入を察知して、活性化シグナルを伝達し、感染防御反応を誘導する。
 Toll-like receptor (TLRs)の他に、細胞表面には、補体C3レセプター、Mannose receptor、Scavenger receptorなどが、存在し、侵入した病原体(細菌やウイルスなど)の侵入を、認識する。
 Mannose receptorは、細胞表面のレクチンであり、病原体表面(表層)の糖(糖鎖のマンノース)と結合する:Mannose receptorは、細菌、真菌、ウイルス感染細胞、寄生虫の表面の抗原(糖鎖のマンノース)と、結合する。
 Scavenger receptorは、リポ蛋白や、リポ多糖(LPS)など細菌の表面に存在する糖脂質とも、結合する。


ゴリラは持ち上げることができますどのくらいの事実

 マクロファージ(Mφ)表面などに存在する、補体C3レセプター、Scavenger receptor、Fcレセプター、レクチンなどにより、侵入した病原体(細菌やウイルス)は、貪食され、クリアランスされる。
 病原体の菌体膜成分(LPSなど)は、細胞表面に存在するTLR4/MD-2、TLR2/TLR1、TLR2/TLR6によって、認識される。
 ウイルス由来のDNA、RNAは、細胞内顆粒に存在するTLR3、TLR7、TLR8、TLR9によって、認識される。


 TRL(Toll様受容体)には、TLR1〜TLR10の存在が知られているが、TLR8とTLR10の機能は、判明していない。TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6は、細胞表面に存在し、TLR3、TLR7、TLR9は、細胞質内のエンドソームに存在する。
 TLR1は、TLR2と、ヘテロ二量体を形成し、ペプチドグリカンや、細菌由来のリポペプチド(トリアシルリポペプチド)を、認識する。
 TLR2は、TLR1や、TLR6と、ヘテロ二量体を形成する。
 TLR3は、dsRNA(二本鎖RNA:ウイルス由来)を、認識する。
 TLR4は、MD2と会合して複合体を形成して、LPS(エンドトキシン)、リポタイコ酸、リピッドAを、認識する。LPSは、血清中では、LBP(LPS binding protein:肝臓で生成される)と、LPS/LPB複合体を形成する。TLR4、MD-2、CD14は、LPSレセプター複合体を形成し、LPS/LPB複合体を認識(受容)する。TLR4は、マクロファージ以外に、腸粘膜上皮細胞、胃粘膜上皮細胞にも発現している。ピロリ菌(H. pylori)から分泌されるリポ多糖類(LPS)は、TLR4に結合し、サイトカインのIL-8産生を誘導し、胃粘膜の炎症(胃炎)が起こる。
 TLR5は、フラジェリン(細菌の鞭毛に含まれる)を、認識する。TLR5は、腸管の上皮細胞の毛細血管側に存在する。生体は、腸管の上皮細胞表面に存在する腸内細菌(常在細菌)に対しては、免疫寛容を誘導するが、腸管粘膜を越えて侵入した腸内細菌に対しては、TLR5などで、認識し(感知し)、免疫応答をする。
 TLR6は、TLR2と、ヘテロ二量体を形成し、マイコプラズマ由来のリポペプチド(細菌由来のリポペプチドとは、アシル基が異なる)を、認識する。
 TLR7は、ssRNA(一本鎖RNA)や、イミダゾキノリン(抗ウイルス薬)を認識する。
 TLR9は、非メチル化CpGDNA(細菌のDNA:哺乳類のDNAは、C-Gの Cの部分が、メチル化されている)を、認識する。クロマチン構造は、DNAメチル化や、ヒストン修飾により、転写活性が調節される(エピジェネリック制御)。CpG(シトシン-グアニン)は、哺乳類では、メチル化が最も高頻度に認められるジヌクレオチド。CpA(シトシン-アデニン)や、CpT(シトシン-チミン)残基も、メチル化が認められる。


 参考文献
 ・宮坂信之、他:わかりやすい免疫疾患 日本医師会雑誌 特別号(1) 生涯教育シリーズ−67、2005年.
 ・谷口克、他:標準免疫学(第2版、医学書院、2004年).
 ・山本一彦、他:カラー図解 靭帯の正常構造と機能 IV 血液・免疫・内分泌 (日本医事新報社、2002年).
 ・森本幾夫:Tリンパ球の免疫における役割 日本医師会雑誌(特集 臨床医のための免疫学) 第123巻・第11号、1733-1739, 2000年.
 ・宮坂信之:ナチュラルキラー細胞の働き 日本医師会雑誌(特集 臨床医のための免疫学) 第123巻・第11号、1740-1742, 2000年.
 ・三森経世:自己免疫発症のメカニズム 日本医師会雑誌(特集 臨床医のための免疫学) 第123巻・第11号、1747-1752, 2000年.
 ・岸本忠三、他:岩波講座 免疫科学3 免疫担当細胞(岩波書店、1986年).
 ・金田一孝、垣生園子、他:新免疫学叢書10 キラー細胞(医学書院、1983年).
 ・山村雄一、他:免疫学4 細胞性免疫 アレルギー(中山書店、1982年).
 ・小林登:臨床医のための免疫科学 日本医師会雑誌 生涯教育シリーズ−5 第93巻・第8号、昭和60年.
 ・竹内勤:総説 CD45分子と免疫応答 日本臨床免疫学会雑誌 Vol.15 No.1、1-12、1992年.

 ・安保徹:NK-LAK細胞の最近の知見 日本臨床免疫学会雑誌 Vol.15 No.6、517-521、1992年.
 ・三浦総一郎、他:腸リンパ装置(GALT)−形態と調節機構− 日本臨床免疫学会雑誌 Vol.15 No.6、553-558、1992年.
 ・山城雄一郎:総苑 消化管は免疫臓器の1つである 日本小児科学会雑誌 98巻4号、841-844、1994年.
 ・坂井建雄、河原克雄:カラー図解 人体の正常構造と機能 III消化管、日本医事新報社、2003年.
 ・新谷弘実:胃腸は語る−胃相腸相からみた健康・長寿法、弘文堂(平成10年初版、平成12年11刷).
 ・木下芳一、竹口紀晃:プロトンポンプ探求シリーズ、H.pylori感染の有無と胃酸分泌動態、エーザイ株式会社、CODE PT(1)369(2005年8月作成).
 ・斎藤博久:第109回日本小児科学会学術集会 分野別シンポジウム:乳幼児気管支喘息治療の早期介入 アレルギー性炎症性疾患に関わる遺伝的背景、エピジェネティック制御と環境因子、日本小児科学会雑誌、111巻1号、10-15頁(2007年).



These are our most popular posts:

ヘルパーT細胞

このような機序で、ヘルパーT細胞は、「自己」の成分(自己抗原)には、免疫応答(自己 免疫)を起こさない。 1.単球・マクロファージは、ヘルパーT細胞に抗原を提示する 細菌 などは、単球・マクロファージにより貪食され、リソソームで、抗原(抗原ペプチド)に分解 される。 .... が、抗原提示細胞の補助受容体(CD80やCD86)からのシグナル2により 刺激されないと、活性化されず(IL-2mRNAの発現が増加しない)、免疫寛容が誘導され る。 read more

αインターフェロン産生細:重要な「高速応答」成分 - NPG Nature Asia ...

活動電位(かつどうでんい、英: action potential)は、なんらかの刺激に応じて細胞膜に 生じる一過性の膜電位の変化である。 ... この種のNa+チャネルが存在しない細胞や、 存在しない細胞上の部位(多くの神経細胞の樹状突起など)においては、活動電位は 発生しない。 .... このチャネルは膜電位の変化にすぐには応答せず、遅れて応答を返す 。 read more

活動電位 - Wikipedia

境細菌である。さらに細菌の多くは細胞外に 1 ^ 0 ( 11 刺激分子を放出していることが わかった。^ 0 ( 11 刺激分子は極めて安定性高く,煮沸, 5 ^ 1 ^ 30 化 1 \ 1 ! ... 5 のよう な典型的炎症応答を誘導しないという事実から,この環境中に蓄積された免疫刺激活性 は今まで見落とされてきた。 ... 感染を伴わない免疫刺激がわれわれの免疫にどのよう な役割を果たしているのか, ^ 0 ( 11 , 1 ^ 0 ( 12 の機能を考える上で重要な示唆を 与えるだ ... read more

大阪大学 微生物病研究所 -病気のバイオサイエンス-

2004年7月23日 ... 生体は、感染初期に迅速に免疫応答を行うためのシステムを自然免疫として有している 。この自然免疫 ... Toll様受容体は、認識後、サイトカイン産生、あるいは、種々の共 刺激分子の発現増強を誘導し、Tリンパ球の活性化を惹起し、免疫応答を誘導する。 このこと ... これらの細胞は、遺伝子再構成を行えないので、微生物を特異的に認識は しないと考えられていた。しかし、これらの ... となっている。また、マイコプラズマは、この ような細菌と異なり、LPSもペプチドグリカンなどから成る外膜も持たない。 read more

0 件のコメント:

コメントを投稿