鹿児島大学理学部・理工学研究科集中講義
「地殻変動論」
2008年8月4日〜7日
少々長いですが、レポートで頂いた質問への回答を掲載しました。不十分な点もあると思いますが、この回答に対する質問も歓迎します。
地殻変動観測について
・埋められた三角点や水準点が動いたりずれたりすると測量に支障が出るのではないですか?
三角点や水準点が各種工事の影響を受けたり、地滑りで地盤そのものがずれてしまったりすることはもちろんあります。そうなると、これらの点の位置情報は使えなくなり、事故点として扱われ、再度測定して正しい座標値を求めたりします。そうした影響を受けにくい場所に選定するのが大前提であることはもちろんです。
・GPS衛星の位置がふわふわ動くことはないのでしょうか? 衛星が1mmずれると地表の測定値はどれくらいずれますか?
GPS衛星は地球の上空約20,000kmを、約3.9km/秒という物凄い速度で周回しています。衛星の軌道は地球やその他の天体の重力、太陽放射など様々な影響でふらつきますが、実際に衛星が飛んだ軌道は、事後の解析により5cm以下の精度で決定されています。衛星の軌道の誤差の地表の測定値への影響は、地表の測定する距離にもよります。概ね、
(地表の測定精度)=(衛星の軌道誤差)×(地表の測定距離)÷(20,000km)
という関係があり、衛星の軌道誤差が5cmとすると、1,000kmの距離に対して2.5mmの精度となります。
・GPSはなぜ2つの周波数や2つのコード信号を使うのですか?
2つの周波数を使うのは、電離層の影響を補正するためです。電波は、地球を取り巻く電離層を通過する際に、真空中の場合よりも遅れて伝わりますが、この遅れ方が周波数によって異なります。この性質を利用して、2つの周波数の測定値を組み合わせて、電離層による遅れの影響を除去することが可能なのです。2つのコード信号のうち、一つは民生用、もう一つは軍事用です。軍事用は解読困難な暗号になっており、専用の受信機が無いと利用できません。ただし、測量用の精密測定の場合には、基本的にコードを使わず搬送波位相のデータを用いるので、軍事用のコードが使えなくても問題はありません。
・GPS相対測位の原理が良く分かりませんでした。
相対測位では、複数の観測点で複数の衛星を測定したデータの二重差を取ることが基本的な処理となります。これは、受信機や衛星の持つ時計の誤差を除去するためです。異なる受信機で取られた同一衛星のデータには、この衛星の時計の誤差が同じように含まれるので、データ同士の引き算をすると、衛星の時計の誤差の影響を取り除くことができます。一方、同じ受信機で取られた異なる衛星のデータ同士の引き算をすれば、受信機の時計の誤差の影響を取り除くことができます。このようにGPSの厄介な誤差要因である時計の影響を取り除くことで、衛星と受信機の配置に関する情報だけで方程式を立てるというのが相対測位の本質です(ちょっと難しかったかも知れませんね。詳しくは中尾先生に聞いて下さい)
・GPSはアメリカの方が精度が良いと聞いたことがありますが、本当のところはどうでしょう?
GPSの運用開始当初は衛星の数が少なかったこともあり、アメリカの上空で多くの衛星を受信できるような配置がされていたようですが、既に衛星の配備は完了しており、アメリカが他の地域よりも有利ということは無いと思います。極地域では衛星配置に偏りが出たり、熱帯地域では大気中の水蒸気の影響が大きかったり、といった地域性はあると思います。
・GPSデータの解析で上対馬を基準としたのはなぜですか?ひずみの図でも基準とする点はあるのでしょうか?
上対馬はたまたま基準にとっただけですが、西南日本が含まれるアムールプレートの動きに日本列島の中では一番近い地域だと考えています。固定点の取り方で図の見え方は大きく異なりますが、実際にはどこを固定しても良い(物理的な意味は変わらない)ので注意しましょう。
ひずみの計算の場合には、固定点は関係ありません。ひずみは、地盤の伸び縮みや形の変化にだけ関係した量なので、地殻変動の議論をする時にはひずみを用いるのがより適切です。
・合成開口レーダは環境問題への応用は可能でしょうか?観測データは埋め立てや森林伐採等で変化するのか?
ここで、カール·シェーレ発見chlorinreたのか?
「だいち」のLバンドの信号は、植生を透過して地表まで到達し、地表の変化や木の幹の情報までもたらしてくれます。このことから、アマゾンの熱帯雨林などの森林に関する情報が得られるそうです。このように、合成開口レーダは環境変化の監視目的でも期待されています。埋め立てや森林伐採等で地表の様子が変化すると、簡単にそれを検出することができます。
・合成開口レーダに2つのバンドがあるのは何故ですか、それぞれどんな特長があるのでしょう?
合成開口レーダは使用するマイクロ波の波長によりいくつかの種類があります。講義ではLバンド(波長23.2cm)とCバンド(波長5.6cm)を紹介しましたが、他にもXバンド(波長約3cm)も用いられています。用いる波長の違いによって地表の見え方は異なってきます。Lバンドの信号は地表の植生を透過するので、緑に覆われた日本のような土地で地殻変動を見るのに適しています。一方、波長が短くなれば、それだけ分解能が向上するので、CバンドやXバンドのセンサも利用価値は高いのですが、植生に覆われていない、都市部や砂漠地域など、適用可能範囲が限られています。こうしたそれぞれの特性を生かして、様々なバンドの合成開口レーダが利用されています。
・VLBIの観測にパルサーは影響しないのでしょうか?
VLBIの観測に用いられるパラボラアンテナは、非常に指向性の高いもので、観測の際には正確に制御され、特定の電波源(クエーサー)に対して向けられているので、他の天体の影響はあまり無いのではないでしょうか(素人の回答です)。
宇宙空間の電波源としてのパルサーに対する関心も高いようで、パルサーを対象とするVLBI観測も世界各地で行われているようですが、地表の位置測定よりは、パルサーの位置の特定やVLBIの精度向上などを主たる目的としているようです。
・宇宙測地技術を複数積んだ人工衛星は作れないでしょうか?
GPS衛星は、地球上の各地から同時に見える必要があるため、約20,000kmという高い高度で地球を周回しています。一方、合成開口レーダの衛星は、地表の詳細な画像を撮影するため、その高度は数100km程度です。このように、それぞれの衛星は、目的に合わせて設計されているため、複数の技術を一つに積んだ衛星を作るのは難しいかも知れません。日本の衛星である「だいち」は、合成開口レーダのセンサに加え、光学センサも積んでいますし、GPSと似たようなシステムとして主にロシアが開発したGLONASS、ヨーロッパが開発を進めているGalileoなどのシステムがあります。地上での観測で、これらの異なるシステムの電場を同時に受信し、解析することで観測精度が向上できるのではないかと期待されています。
・宇宙測地技術が普及すると、古い測量はいらなくなるのでしょうか?
宇宙測地技術は大変魅力的ですが、機材が高価だったり、解析に技術を要したりします。それほど高い精度を必要としない測量では、作業効率等の問題もあり、古い技術がそのまま使われていることも多いです。また、上下変動については、いまだに水準測量が最も精度の高い測定法となっており、当分の間は使われ続けると思います。
歪みについて
・日本列島と地域の歪みの図が異なるように見えるのはなぜ?
講義中に示した図では、歪みの計算の際に設定する滑らかさの度合いを、日本全国に関する図と地域の図とで変えてしまっていました。滑らかさを強くすると、安定した結果が得られる反面、細かい様相は見えにくくなります。一方、滑らかさを抑えると、細かい様子を見ることができますが、悪いデータがあるとその影響を受けやすくなります。
・地質学的ひずみ速度はどのように求めるのですか?
地質学的なひずみ速度は、活断層の平均変位速度や年代の分かっている地層の折れ曲がり具合などを調べ、それを対象領域全体について積算することで計算されています。断層以外における変形の寄与があまり考慮されていないので、過小評価になりやすい計算手法だと考えられます。
沈み込み帯の地震とプレート間カップリングについて
・カップリングを計算する時に、沈み込んだプレートの傾斜はどのように考慮されるのでしょうか?
プレートは、海溝からプレート運動速度でどんどん沈み込んでくるので、沈み込んだプレートも同じ速度で進んでいかないと困ります(質量が余ってしまう)。プレートの傾斜角は考えずに、沈み込む前のプレートの運動速度(もしくは、プレート運動モデルからカップリングを評価する位置で計算される相対運動速度)を基準(100%)とすべきだと思います。傾斜角90度で真下に沈み込むプレートを考えれば自明ではないでしょうか。
・Wang et al.(2001)における遷移帯の媒質の与え方はこれで良いのでしょうか?
人は、要素のリードを発見しました
このモデルは、地震発生時の急激な断層のずれの沈み込み深部に対する影響を評価するためのものです。何が正しいかは誰も分からないわけですが、色々と試してみることは重要で、この研究の仮定もそうしたものの一つです。これはと思うモデルの与え方があれば、ぜひ試してみてください。
・南海地震についてもっと知りたい。
限られたスペースでこの質問に答えるのは少し大変なので、地震調査研究推進本部の「南海トラフの地震の長期評価について」を参照してください。
・深発地震はどのように起きるのでしょうか?
沈み込んだプレートに沿って深さ200kmくらいまでで起きる地震を「やや深発地震」それより深いところで起きる地震を「深発地震」と言います。これらの地震の原因はまだ研究途上ですが、「やや深発地震」は、沈み込んだプレート内の温度・圧力条件の変化に伴う脱水などを原因として起きているようです。一方、さらに深い深発地震の原因としては、沈み込んだプレートの鉱物の相転移などいくつかの説があるようです。いずれにしても、こうした深発地震はプレートが沈み込んでいる場所以外では起きていません。
スロースリップについて
・スロースリップ、深部低周波地震(微動)、前兆すべり、前震の違いは?これらの現象から何が分かるのか?
スロースリップは、沈み込んだプレートの境界面上で起きるゆっくりとした断層運動のことで、GPSやひずみ計により検出されています。深部低周波微動は、沈み込んだプレートの深さ30km付近を発生源とする連続的な低周波の振動現象で、高感度の地震計ネットワークによる観測で見出されました。深部低周波微動の中で、波形の立ち上がりがはっきりしていて読み取りができるようなものを深部低周波地震と呼びます。深部低周波微動は、一部のスロースリップと同期して発生していることが見つかっていますが、両者の関係はいまだ定かではありません。
前兆すべりは、大地震の発生に先行して、震源域の一部で断層がずれ始める現象のことで、実験的には確認されていますが、実際の観測例は殆どありません。1944年東南海地震直前の変化がそのように解釈されてきていますが、講義でも紹介したように疑問が残ります。前震は、大地震に先行する地震活動のことで、多くの場合、本震が起きてから、あれば前震だったのか、ということになります。顕著な前震活動を伴う大地震の例は過去にたくさんあり、地震予知を実現するための重要なポイントの一つと考えられています。
深部低周波微動は、これまでのところ大地震の前兆現象として観測された例はありません。スロースリップについては、2003年十勝沖地震の後に、プレート境界のゆっくりとした断層すべりが東へ拡大していき、2004年に釧路沖の地震につながったという例が知られています。こうした現象だ大地震の前兆となるかどうかは、今後多くの実例を通して検証する必要がありますが、これらの現象を捉えることができる観測網を我々が手にしたということは、将来に向けて大きな意義があると思います。
・スロースリップと大地震を起こした断層の位置関係はどうやって調べる?
メキシコのゲレロ・ギャップでは、1911年に大地震を起こした場所付近でスロースリップの発生が確認されていますが、大地震の震源域もスロースリップの場所も正確には分かっていません。通常、スロースリップはGPS等の観測データから、過去の大地震は地震波形の解析や余震分布から断層の位置を調べていますが、両者をきちんと比較して議論できるだけの材料がある場所は、世界的に見ても非常に限られています。
・大地震とスロースリップの関係が良く分かりませんでした。
将来大地震を起こすかも知れないと言われている地震空白域で、実はスロースリップが起きていた、ということになれば、スロースリップでエネルギーが解放されるため大地震の心配は少なくなります。一方、大地震発生域のすぐ隣でスロースリップが起きると、通常は、弱いながらもバネを一緒に支えていた部分の支えを失ってしまうため、大地震が発生しやすい状態になると考えられます。このように、大地震とスロースリップの関係はお互いの位置関係により大きく異なります。
・スロースリップは余効変動の一種ではないのでしょうか?なぜ環太平洋地域にしか無いのでしょうか?
余効変動は、大地震の発生に引き続いてその周囲で発生する地殻変動で、本震からの時間経過に伴って次第に収まっていくものです。スロースリップは独立したイベントで、「本震」がありません。従って、余効変動の一種とは言えないと思います。スロースリップが見つかっている環太平洋地域は、いずれもプレートの沈み込み帯です。プレートの沈み込みがある場所で、精密な観測を行えば、他の地域でも見つかる可能性が高いと思います。また、ハワイのような火山地域でも火山活動に伴うスロースリップが検出されています。
フクロウは何を食べるか。
・ゆっくり地震のような地震を故意に起こすことは可能でしょうか?人工的に歪みを解放し、地震を避けることは可能でしょうか?
確かに、地震の代わりにゆっくり地震を起こすことができれば、被害が出なくて多くの人が助かりますね。そのためには、スロースリップが起きる条件を知ることが必要ですが、現在はそれが良く分かっていません。温度条件や水の働きなど、いくつかの要因が考えられています。ただ、こうした条件が分かったとしても、そのような条件を人工的に作り出せるかというと、非常に高温の状態を作り出さないといけないとか、大量の水を注入しなければいけないとか、実際には実現不可能かも知れません。ただ、そうした条件を明らかにすることは大変重要だと思います。
・超長周期地震とは何でしょうか?
スライドの片隅に書いてあった用語です。良く気付かれましたね。超長周期地震は、最初、広帯域地震計による観測で、南海トラフの海溝軸付近で発生していることが見つかりました。このイベントは20秒程度の周期を持ちます。やや高角の逆断層メカニズムを持ち、沈み込み帯周辺の付加体内で発生しているイベントと解釈されています。その後、深部低周波微動のイベントの中にも同様な超長周期地震が見つかり、こちらはプレート境界の深い部分で生じているゆっくりとした断層運動が新たに発見されたものと考えられています。
余効変動について
・粘性緩和はどのように起きるのでしょうか
容器に入れたハチミツにパチンコ玉を落とすと、パチンコ玉はハチミツの粘性のために表面で止まりますが、時間が経つと底へ沈んでしまいます。地球内部のアセノスフェアは、このハチミツと同じような粘性流体としての性質を持っています。大地震が起きると、アセノスフェアでも瞬間的に応力状態が変化しますが、その後、アセノスフェアの流動によって差応力は解消し、新たな平衡状態が作られます。この新たな平衡状態にいたるまでの過程が粘性緩和と呼ばれる現象です。
活断層と内陸の地震について
・断層のずれによって新たに生じた応力や断層が無い部分の応力はどのように解放されるのか?
活断層で大地震が起きると、その両端部には大きな応力が加わるはずです。でも、この応力がどのように解消されているのか、現在はまだ良く分かっていません。断層が毎回同じような破壊を繰り返すと、断層の端では応力が高くなって降伏してしまっている(弾性体としての振る舞いの限度を越えて、変形しても応力が上がらない状態)可能性があります。また、逆の考え方として、断層の端では既に降伏して応力がたまらない状態になっており、解消されずに残った部分でだけ地震が起きるという見方も可能だと思います。また、断層が無い部分での変形がどのように解消されているか、現時点では情報がありません。今後、様々な観測や研究を通して明らかにしていきたい課題です。
・濃尾地震の余震は今でも続いているのでしょうか?
濃尾地震は今から117年前の1891年に起きた地震ですが、その震源域に沿って地震活動が活発で、余震のように見えます。余震活動には、発生個数が本震発生からの経過時間の逆数に比例するという法則(大森公式)があるので、100年経過後でも1年経過後の1/100程度の余震は起きていておかしくないことになります(実際にそうかどうか、自分で確認してみてはどうでしょう?)。最近の研究によれば、日本列島の内陸部で見られる地震活動のかなりの部分が実は過去の大地震の余震であるという考え方もあります。
・大地震が起きるとその周囲で地震が起きやすくなるのはなぜか?
これははっきり言って良くわかりません。日本列島の地震活動を、地震がランダムに発生していると仮定してシミュレーションした場合と比較すると、一つの大地震が発生した時に、そこから100km以内では約100年程度の期間にわたって、通常よりも大地震が発生し易い状況になります。これほど長い期間にわたって地震が起こりやすい状態を保つのには、下部地殻の流動変形が非常にゆっくりと伝播していく、といった可能性が考えられますが、それ以上の根拠は現時点では何もありません。
・糸静線が断層沿いに様式が変わる複雑な原因は?
糸魚川—静岡構造線は、日本列島の中央部に連なる大地溝帯「フォッサ・マグナ」の西縁にあたります。フォッサ・マグナの北半分では、日本列島が約1,500万年前に大陸から離れて日本海が形成された時に海底でたまった厚い堆積層がその後顕著な短縮変形を受けています。一方、フォッサ・マグナの南部は、フィリピン海プレートの沈み込みによって形成された付加体が変形している場所で、そもそも成り立ちが異なります。地質構造の境界が場所によって折れ曲がったりしているのですが、この地域の応力場はおおよし北西—南東方向の圧縮場であり、この応力軸と断層の走向との関係から、中央部では左横ずれで、そこから北に向かうにつれて、横ずれを伴った逆断層から純粋な逆断層へと様式が連続的に変化していって� ��ます。
・日本列島で地震が全く起きない場所もあるのでしょうか?
日本列島の地震の震源分布を見てみると良く分かりますが、日本列島のどこでも一様に地震が起きている訳ではありません。琵琶湖の周辺や北海道の北東部など、地震の非常に少ない地域は存在します。しかし、こうした地域が未来永劫地震の無い場所かどうかは分かりません。いずれにしても、我々は、地球の長大な歴史のごく限られた一部分を見ているのに過ぎない、という認識を持つことは大変重要です。
地震予知について
・1944年東南海地震の前兆的変動について、プレート境界の断層では変動を説明できない、というのはなぜですか?
掛川付近ではプレート境界の深さは25〜30km程度になります。この深さで断層のずれが起きると、それに伴う地表の変動は震源の深さに相当するだけの広がりを持ちます。けれども、東南海地震の前後に掛川付近で検出された上下変動は、比較的狭い範囲で急激な変化を示しており、プレート境界で起きたとは考えにくいのです。むしろもっと浅い、地殻内の地震として考えた方がより良くデータを説明できます。ちなみに、この時の水準測量データは、地震時の変動も含むものですが、Mogi(1984)による図を見ると、地震前の傾斜変動は地震時の傾斜変動の2,3割に達し、決して無視できない量になっています。地震前と地震時の変動の原因が違うとすれば、そうした違いは両者が合わさった変動パターンにも見えるはずです。前兆� �変動がプレート境界起源でないとすると、プレスリップ(前兆すべり)であるという解釈もできないことになります。
・地震予知は地震が起きてからしかできないのですか?ナマズの行動を解明すればできるのではないでしょうか?
これまでの研究では、「地震予知」とは言っても、地震が起きた後に前兆かどうかを議論する「後予知」ばかりでした。これではいつまでやっても地震予知にはつながりません。地殻の活動を常にモニターし、検出された変化を逐次解釈していくようなシステムが必要です。
よく「ナマズが地震を予知する」などと聞きますが、では、ナマズはどうやって地震を予知するのでしょう?おそらく、何らかの異常を検知するからこそナマズは騒ぐので、その異常は、人間が作ったセンサーでも検出できないとおかしいと思いませんか?我々はナマズの話を聞くことはできませんから、ナマズを騒がせた異常を定量的に検出し、分析を試みることが科学的なアプローチだと思います。
・地震発生確率や被害想定の数字はどうやって出すのでしょうか?
地震発生確率は、活断層などを調査して過去の地震発生履歴を調べ、平均的な地震発生間隔と、最新の地震の発生時期、あと地震の繰り返し発生に関する統計モデルを組み合わせて計算します。政府の地震調査研究推進本部で使っているのは、今後30年間の地震発生確率という数値で、地震の切迫度には関係なく、平均再来間隔が短い程高い値が出るため、数値を見るときには注意が必要です。
日本の各地域における人口や土地条件、建物の分布など、様々な情報がデータベース化されており、地震の発生位置と規模を想定すれば、各地点における震度が計算できます。与えられた震度に対して、建物の種類毎の倒壊率などを計算していけば最終的には被害の想定が得られることになります。もちろん、こうした被害想定はおおざっぱなもので、その通りの被害になる訳ではありませんが、同一条件で複数の地震を比較したり、また、対策をとった時の効果を判定したりする上では役に立つものだと思います。
・地震が予知できたとして、それで人々の安全は保証できるのでしょうか?
大地震の場所や時間、規模が事前に分かれば、地震による被害は相当軽減できると思います。もちろん、一つ間違えば予知情報はパニックを引き起こすので、情報伝達の仕方や事前の啓蒙活動などは大変重要です。日本では事前の地震予知が公式に成されたことは一度もありませんが、その情報をどのように活用できるかということも重要な研究課題です。
・地震予知はできるようになると思いますか?
この質問はそのまま若い皆さんへの質問としてお返ししたいと思います。
「あなたは地震を予知したいですか?どうやったら予知できるようになるでしょうか?」
同じ夢を持ち、こういう問いかけに対する答えを一緒に探してくれる仲間を募ります。
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