白と黒のスーパースター |
広大な中国でもジャイアントパ ンダが住んでいるのは国の中央部にある四川(シセン)省や陝西(センセイ)省、甘粛(カンスー)省そしてチベットの一部といったごく限られた地域の山の中 だけで、野生での生息 数も限られており、東洋一のレアアニマルと なっています。このため現在ではオ カピ、コビトカバとともに『世界三大珍獣』の一つに数え られています。彼らの棲んでいる山は竹林の多い森の茂ったところで、標高1200〜3900mの結構高い所に分布しています。
ジャイアントパンダの体の大きさは体 長1.5m、肩の高さが75cmぐらいで、オスのほうがメスより大きくなり、体重115kgぐらいまで大き くなります。一 方メスのジャイアントパンダは100kgぐらいまで成長します。
彼らの主な食べ物といえばもちろん笹で、一日に9〜13.5kgもの量を食べ、特に柔らかいタケノコを好むそうです。 自然界において これだけの笹を食べるのは大変で、そのため彼らは一 日のうち12時間以上を餌探しに費やしていますが、彼らがこんなにも頑張って笹を求めるのには理由があります。というのも彼らの消化器は完全な草食動物の ものではな く、肉食動物のものに近いため、効率よく植物を消化することができません。従って食べた物からあまり栄養を摂取すること ができないため、その分を量を増やし て補う必要があるのです。
自然界におけるジャイアントパンダの食べ物の99%以上は笹ですが、果 物を食べることもあり、まれに小型のホ乳類や魚、昆虫など動物性の食べ物を食べるこ ともあります。またパンダを飼育している動物園では特別に配合したビスケットや栄養補助のためのサプリメントを与えることもあるそうです。(昔の動物園は肉も与えていたんだとか。)ち なみに彼らの 胃の壁は堅い竹の組織も消化できるように、筋肉質で強靭な構造になっており、腸も笹のとげなどが刺さらないように分厚い層で覆わ れています。
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さて上の写真を見て分かってもらえるとおり、ジャイアントパンダの体で黒くなっている のは目の周りと耳、肩と四本の足となっています。では彼らの尻尾は何色? と聞かれるとこれも「黒」と答える人が結構いるのですが、実際には白い色をしています。しっぽの長さは15cmぐらいで体の大きさに比べてかなり短く、可 愛い しっぽを持っています。また目の周りの模様のためタレ目のイメージがある彼らですが、本当の目は猫のように上がり目なのだそうです。
ところでパンダがどうしてあのような模様を持つようになったのかを語る次のような昔話が中国には残されています。昔々、パンダ達は今と違い白い色の体を 持っていました。そしてそのパンダ達と仲のいい人間の少女がいて、楽しく一緒に暮らしていました。しかしある日その少女が死んでしまいます。残されたパン ダ達は少女の墓の前で泣き続けした。そして流れる涙を前足でぬぐいつづけたところ、ついに眼の周りが真っ黒になってしまいました。さらに悲しむパンダ同士 が抱き合ったところ、耳や足、肩にもその黒い模様が写ってしまい今のような模様になってしまったということです。
ジャイアントパンダの頭骨は大きく、さらに堅い笹をかみ砕くため丈夫な顎を持っています。また彼らの臼歯はとても大きくて数多くの突起があり、これも笹を かみ砕くために進化したものであると言われています。
彼らはしっかりとした巣を作ることはありませんが、木の上や洞窟などで眠ることがあります。このため木登りがうまく、意外です が泳ぐこともできます。
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ジャイアントパンダとクマとレッサー 君 |
そうなると、「それじゃあ、クマの中では何が一番ジャイアントパンダに近いの?」という疑問を持つ人がいるかもしれません。これに対して最近のDNA研究 で色々なクマの遺伝子を調べたところ、なんとパンダくんに一番近いのは中国から遠く離 れた南米だけに棲むメガネグマというクマであ ることが明らかになりま した。いったいなぜこんなに離れて暮らす彼らが遺伝的に近いのか私には分からないですが、いったい過去になにがあったんでしょう??
そしてクマの仲間である彼らにはその愛くるしいイメージと反して、かなり気性の荒い一面があります。 特に動物園の飼育係や観光客が 襲われる事件も何件か起 こっていますが、これは人間を食べようとしているのではなく、おそらくストレスなどが溜まっていらだっていた結果なのではないかと考えられ ています。
さて「パンダ」といえば忘れてはいけないのが、今ではすっかり日本でも有名になったレッサーパンダ君たちの存在です。こちらはぱっと見たところアライグマ のような見た目をしており、ジャイアントパンダ達とは似ても似つきません。しかしながらこの2種類の動物の間にはその名前以外にもいくつかの共 通点があります。
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まず彼らは両方とも竹林の中に 棲み、主に笹を食べて生活しています。そして前足には竹をつかむために発達した「6本目の親指」とよばれる、他の指と向い合 せになる形で発達した手首の骨の塊が付いています。このことから昔の科学者たちは「見た目は違っているけど、実はジャイアントパンダとレッ サーパンダは仲 間なんじゃないの?」という疑問を持ち、いろいろな議論が交わされてきました。しかしその後遺伝子研究が発達すると、ジャイアントパンダは他のクマと同様 にクマ科の仲間であり、一方のレッサーパンダはレッサーパンダ科という独立したグループに属することが 明らかにされました。つまり両方とも別々に笹を食べるよう に進化したのですが、種族としては大きく異なっていたということです。
さてこの「パンダ(panda)」と いう名前は「笹を食べるもの」という意味のネパール語の「ponya」をもとにしておりで、もともとはレッサーパンダ君たちが単に「パンダ」と 呼ばれて いました。しかし1901 年ごろ、ジャイアントパンダも笹を食べることが明らかになると、こちらの方を「ジャ イアント(大きな)パンダ」、もともとパンダ と呼ばれていた小型のパンダのことを「レッサー(小さな)パンダ」と 区別して呼ぶようになりました。そしてさらにジャイアントパンダの方が有名になってく ると、「パンダ」という名前はもっぱらこちらを呼ぶ場合に使われるようになり、レッサー君は残念ながらお株を奪われる形となってしまいました。
ちなみに「パンダ」の名前が付く前は、西洋の人々はジャイアントパンダのことを「Mottled Bear(まだらなクマ)」とか「Particolored Bear(多彩なクマ)」と呼んでいたそうです。また知っている人も多いかもしれませんが、中国語では彼らのことを「大熊猫」と書きます。こう呼ばれるようになった理由に は諸説があり、普通のクマの目は我々人間と同じように丸い形の瞳を持っていますが、パンダの瞳はネコの眼と同じように縦に割 れた形をしていて、更にジャイアン トパンダもネコと同じように木の枝などに楽々と登ることができることから、「大きなネコっぽいクマ」ということで大熊猫と呼ばれるようになったと言われて います。またもともとはネコに似たレッサーパンダが「熊猫」とよばれていて、それがジャイアントパンダにあてられたのだという説もあり、ここでもレッサー 君のオリジナリティが可哀そうな立場に立たされてしまっています。
ジャイアント パンダの繁殖期は毎年3月半ばから5月半ばごろで、 この時期になるとメスのジャイアントパンダは1〜3日だけ発情期に入ります。発情期にある メスは辺りに臭いによるマーキングを行ったり、鳴き声を頻繁に出すようになります。このメスをめぐって2〜5 匹ものオスパンダ同士が争い、その結果もっとも位の高いオスだけがメスと交尾を行います。その後メスは平均135日ぐらいの妊娠期間を経て、8〜9月頃に1〜2匹の子供を産み、ごくまれに三つ子が産まれることもあります。 産まれたばかりのパンダの子供は全体的にピンク色の体をしていて、うっすらと白い毛皮 に覆われており、眼はまだ開いていません。また体重は90〜130gしかなく、自分ではお母さんのミルクも飲むことが 出来ないため、常に母パンダの世話を 必要としています。このため母親は例え子供が二匹 生まれたとしても、どちらか一方しか育てることができません。そこで彼女たちは子供が産まれるとすぐに一匹だ けを拾い上げ、 もう一方を見捨ててしまいます。従って子育てがされない子供は残念ながら産まれてすぐに死んでしまいます。
最初の一年ぐらいまでは子供のパンダは主に母乳によって育てられます。授乳の回数はとても多くて一日に6〜14回も行われ、各 30分間子供はミルクを飲み 続けます。そして6か月頃にな ると次第に笹も食べ始めるようになります。お母さんは一日に3〜4時間餌を食べるために巣を後にしますが、この間子供はずっ とその帰りを一人で待ち続けます。
1〜2週間ぐらいすると子供の毛皮の色は変わり始め、将来黒くなる部分が灰色みがかってきます。そして生後1か月ぐらいで完全にあの有名な白と黒の模様に なります。生後3週間ぐらいで閉じていた眼が開き、最初は自分で動 けなかった子供も2か月半〜3か月ぐらいで、巣の中を這いまわるようになります。巣の中 で一緒にいる時、母パンダはよく子供を転がしたり、レスリングのように組みあったりして遊びます。しかしこれは子供をあやすというよりも、お母さんが子供 で遊んでいるという感じで、時には寝ている子パンダをわざわざ起こして遊ぶお母さんもいるそうです。
その後一年半〜二年ぐらいで子供はお母さんのもとを離れ一人で生活するように なります。そして5〜7歳ぐらいで完全に大人になって、繁殖を行うようになり ます。飼育下でパンダはなかなか繁殖を行うことはないため、野生においても繁殖ペースは遅いのではないかと考えられていましたが、実際には 大体2年置きぐ らいに出産を行い、ヒグマと同じぐらいの繁殖頻度であるようです。
野生における ジャイアントパンダの寿命はよく分かっていませんが、飼育下のものでは大体20〜30 年程度生き、最も長生きしたもので34歳まで 生きた記録 があります。
ジャ イアントパンダ関連のトピックス 9月13日和歌山県アドベンチャーワールドで飼育中のメ スのジャイアントパンダ「ラウヒン(良浜)」に双子の赤ちゃ んが産まれました。ラウヒンも2000年に同園で産まれたパンダで、日本生まれのパンダが子供を出産したのは初めてのことだということ です。二頭の子供の一匹はメスで体重は194g、もう一匹はオスのパンダで体重は116gあったそうです。
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